軍靴の音が聞こえてくるとはどういうことなのか?を考えさせられる本「戦争は女の顔をしていない」

書評

この本を知ったキッカケは漫画でした。この本を原作としてコミカライズされたものを友人に薦められたのがキッカケです。この漫画を読んだ感想は「面白い」ではなかったんです。

「じゃあ何なんだ?」と聞かれると困ってしまうのですが色々と考え込んでしまったんです。それは単純に「戦争は悪だ!」とか「戦争は悲惨だ……」とか陳腐な考えではありませんでした。でも漫画を読んだだけではハッキリとした答えは出せませんでした。「じゃあ原作を読もう」となったんです。

原作は500人以上の「女性」を取材し得た彼女らの「言葉」が書かれていました。彼女らのほとんどが第2次世界対戦の独ソ戦に従軍し最前線で戦った兵士たちでした。

「女性が語る最前線というのはとても生々しい。そして戦争映画など比べ物にならないくらいリアルだ」というのが僕の感想です。戦場となった土地は瓦礫だらけになり、血の匂いが漂う。銃声や大砲や戦車の発射音、そして負傷した兵士のうめき声など人間の五感に訴えてくるものが多いのです。これは男性兵士では語れないと思います。

戦場には「女性的」と表現されるものが全て排除されます。女性的というのは何かを生み出す、何かを大切にする、保護する、キレイにする。こういったものが消え去ります。破壊、攻撃といったものが最大化されるんです。そういった意味でこの本のタイトルに結びつくのかなと考えてしまいました。

この本のもう一つ考えさせられる点は最前線に行く前に彼女たちが考えていたことを知ることが出来る点です。若い彼女らは使命感に燃え、戦争に積極的に参加し最前線に行くように志願するのです。

「最戦前に志願するなんて馬鹿だな」なんて言えるのは僕たちが平和な世界を生きているからです。当時の社会情勢からでは、そんなことは言えないでしょう。明日にでも敵が自分が住んでいる土地を蹂躙するかもしれない。そんな恐怖が社会を覆っていたんです。その恐怖が彼女らの使命感を支えていたんだと思います。

この本を読んで「戦争を防ぐにはどうしたらいいのか?」そんな大きなことを考えることは出来ないと思います。でも「よくわからない恐怖が社会を覆った時に自分はどう対処したらいいのか?」ということを考える助けにはなる気がしています。

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