「天地明察」は少年漫画だ

書評

文庫本2冊からなる天地明察を1週間で一気に読んでしまいました!

前から気にはなっていたのですが、天地明察というタイトルからイマイチどんな話かをイメージできず積読状態だったのをフト読み始めたところハマってしまいました。

家や電車に乗っている最中はもちろん、ホームでの待ち時間や待ち合わせなどの隙間時間も読んでいました。それくらい面白い本でした。

天地明察は例えるならバトルやアクションシーンが無い少年漫画のような歴史小説です。

徳川4代将軍家綱の時代の江戸時代が舞台の歴史小説です。

江戸時代を舞台にした歴史小説と言えば暴れん坊将軍のような刀を振り回して悪を成敗! みたいな本や幕末の関連した本が多いですが、この本には戦争やチャンバラみたいな武器を使った戦いが一切出てきません。

一人の若い男、渋川春海が周囲の人間からサポートを受けながら成長していき、最終的には約20年かけて改暦という大仕事をやり遂げる物語です。

暦とはいわゆるカレンダーのことです。時間の流れをわかりやすくし、普段の生活の中で「何年何月何日」を表現するためのものです。

大抵は月の満ち欠けや太陽の動きから法則を導き出し暦を作り出します。

そんな暦を変えることを改暦と言います。この改暦を行われる前は「宣明暦」という暦を使っていました。この宣命暦なんと800年も使われていたんです!

宣明暦は中国の唐から859年に輸入され使われ始めました。まるで伝統を守るうなぎ屋の秘伝のタレのように長い年月使用されていたようです。

ただその伝統に重きを置きながら使っていた暦は800年使われるなかで徐々に日時がズレるという問題が発生し、当時の人々の暮らしに影響を及ぼすことになりました。

この800年続く伝統ある暦を否定し、新しい暦を作成し採用させることに成功したのが渋川春海、この本の主人公です。

彼は碁打ちと呼ばれる将軍や大名の前で囲碁を打つ仕事をしていました。碁打ちは世襲制で春海は別名「安井算哲」呼ばれていました。

そのまま碁打ちを続ければ安定した収入を得ることができ、庶民よりも良い暮らしが出来ることは確実でした。

しかし春海はそんな生活に飽き飽きしています。更に碁打ちとしての未来に関しても情熱を燃やせない状態でした。

まるで新卒で有名大企業に入社し仕事も出来るが、どこか納得いっていない意識高い系の会社員のようじゃないですか?

いつの世も悩みの本質は似たようなものだと思ってしまいますよね♪

そんな彼は碁打ちとしての仕事の合間に算術にのめり込んでいきます。算術を解くことに面白さを感じハマってしまいます。

算術にハマるうちに、春海の算術好きが幕府のお偉いさんに知られることなり、お偉いさんから密命を受けます。

それは日本全国を旅しながら天文観測を行うことでした。彼はこの旅で同行した面倒見の良い先輩2人に恵まれます。

そして旅の途中でこの旅の目的を2人から知らされます。その目的こそ改暦でした。

20代の彼は旅から帰ってきた後、様々な人物から改暦の責任者に推薦されます。なぜなら改暦という大事業は長い年月がかかることを幕府のお偉いさんは知っていたからです。

碁打ちとしてある程度の生活が出来る状態で、突然この様な途方もないプロジェクトの責任者に推薦されたらどうしますか?

しかも上司や先輩社員を差し置いて、取締役から直接呼びだされて責任者になるよう命令されるわけです。

現代ならプロジェクトに失敗しても最悪左遷されたり出世コースから外れたりするくらいでしょうが、この時代は最悪切腹か処刑ですからね。僕が彼の立場だったら恐怖のあまりブルブル震えてしまいます。

結局、春海はこの命令を拝命し20年という長い年月をかけて改暦を行うことになります。改暦が達成された齢、彼は40代になっていました。

バックアップしてくれていた幕府のお偉いさんは隠居してしまったり、心の支えになっていた奥さんは早くに亡くなったりと多くの困難を乗り越えて達成した事業でした。

「歴史はどこか苦手……」「歴史小説は古臭くてつまらない」という人には特にお勧めの歴史小説です。主人公が退屈な日常から、刺激溢れる世界へ飛び込み、様々な困難を乗り越え成長し、目標を達成するというストーリー展開なので、困難に直面する主人公を応援しながら読み進められるので今までの歴史小説とは違うということがわかると思います。

ぜひ読んでみてください!

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